# 内科医が選ぶ、今注目すべき疾患とその背景
日本の医療現場では、生活習慣病をはじめとする様々な疾患が増加傾向にあります。内科医として日々患者さんと向き合う中で、特に注目すべき疾患とその背景について考えてみたいと思います。
## 生活習慣病の現状と変化
生活習慣病は現代社会において非常に重要な健康課題となっています。特に糖尿病、高血圧、脂質異常症などは、食生活の欧米化や運動不足、ストレスの増加などにより患者数が増加しています。
糖尿病に関しては、厚生労働省の調査によると「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000万人と推計されています。さらに「糖尿病の可能性を否定できない者」も約1,000万人いると言われており、国民の約6人に1人が糖尿病またはその予備軍という状況です。
特に注目すべき点は、若年層での発症が増えていることです。これまで中高年に多いとされてきた2型糖尿病が、20代、30代でも見られるようになりました。これは食生活の変化や運動習慣の減少が大きく影響していると考えられます。
## 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の増加
近年、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者さんが増加しています。この疾患は睡眠中に呼吸が一時的に止まることで、質の良い睡眠が得られず、日中の強い眠気や集中力低下を引き起こします。
重要なのは、SASが単なる睡眠の問題ではなく、高血圧や心筋梗塞、脳卒中などの重大な合併症のリスク因子になるという点です。にもかかわらず、日本では推定患者数300万人以上と言われる中で、実際に治療を受けている方はその一部に過ぎません。
SASの増加背景には、肥満の増加や高齢化があります。また、スマートフォンやパソコンの普及により就寝前まで明るい光に曝露される生活習慣も関係しているかもしれません。
## 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の急増
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)も注目すべき疾患の一つです。アルコールをほとんど摂取しない方でも、過栄養や運動不足により肝臓に脂肪が蓄積する状態です。
NAFLDは日本人の成人の約3割が該当すると言われており、その中から非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へと進行し、肝硬変や肝がんに至るケースもあります。
特に問題なのは、NAFLDが長らく無症状で進行することです。肝機能検査で異常が見つかることがありますが、正常値を示す場合もあり、発見が遅れることがあります。肥満、糖尿病、脂質異常症などを持つ方は注意が必要です。
## 自己免疫疾患の増加と環境要因
自己免疫疾患は、本来なら外敵から身を守るはずの免疫システムが自分自身の組織を攻撃してしまう病気です。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本病(慢性甲状腺炎)などが代表的です。
自己免疫疾患の患者数は世界的に増加傾向にあり、日本も例外ではありません。この増加の背景には、遺伝的要因だけでなく、環境要因、特に衛生環境の改善(衛生仮説)、腸内細菌叢の変化、食生活の変化、大気汚染などが関与していると考えられています。
自己免疫疾患は複数の専門領域にまたがることも多く、総合的な診療アプローチが必要です。早期発見、早期治療により症状のコントロールや生活の質の向上が期待できます。
## 心の健康問題の顕在化
うつ病や不安障害などの精神疾患も、内科医として見過ごせない健康問題です。ストレス社会を背景に、これらの疾患は年々増加しています。
特に注目すべきは、身体症状として現れる場合が多いという点です。頭痛、めまい、胃腸症状、全身倦怠感などの症状で内科を受診される方の中に、実は精神的な問題を抱えているケースが少なくありません。
心と体は密接に関連しており、心の健康問題を見逃さない総合的な診療が求められています。
## 疾患予防のための生活習慣改善
これらの疾患に共通するのは、生活習慣の改善によって予防や進行抑制が期待できるという点です。具体的には以下のような取り組みが重要です:
1. バランスの良い食生活:食物繊維、タンパク質、良質な脂質をバランス良く摂取し、過剰な糖質や加工食品を控える
2. 適度な運動習慣:週に150分程度の中等度の有酸素運動を目標に
3. 十分な睡眠:質・量ともに充実した睡眠を確保する
4. ストレス管理:自分に合ったストレス発散法を見つける
5. 定期的な健康診断:早期発見・早期治療のために欠かせない
## かかりつけ医の役割
これらの疾患に対応するためには、患者さん一人ひとりの生活背景や健康状態を総合的に把握するかかりつけ医の存在が重要です。症状が現れてから受診するのではなく、予防的な関わりができる医療体制が理想的です。
内科診療においては、身体面だけでなく、心理社会的な面も含めた全人的なアプローチが不可欠です。患者さんとの信頼関係を築きながら、生活習慣の改善を支援し、必要に応じて適切な専門医との連携を図ることが、かかりつけ医の重要な役割の一つと言えるでしょう。
健康は一朝一夕に得られるものではなく、日々の積み重ねによって維持されるものです。気になる症状がある方、健康に不安を感じている方は、ぜひかかりつけ医に相談してみてください。
当クリニックでは、患者さん一人ひとり